今月のエッセイ(2024/4)
Author: セプティマ・レイ
4月です。4月1日に柏の葉公園に散歩しに行ったら、道端の石垣に大きなトカゲが2匹いるのを見かけました。急に暖かくなったので、長い冬眠から目覚めたのでしょう。近くに寄っても動こうとせず、全身で太陽の光を浴びて、気持ち良さそうにしていました。公園内の池では、カエルが大量の卵を産んでいました。カエルは毎年この時期に卵を産むので、公園に行く度に注意深く池の中を探していました。先週はなかったので、最近産んだのでしょう。孵化しても池の鯉にほとんど食べられてしまうので、今年こそたくさん生き残って、成長して欲しいです。
4月3日に台湾東部で発生した大地震によって10人が死亡し、1,000人以上が負傷しました。私は昨年8月31日まで台北に住んでいたので他人事ではありません。すぐに台北の友人たちの安否をメールで確認しましたが、台北市内の被害はそれほど深刻ではなく、ホッとしました。それでもかなりの揺れを感じたそうで、「とても怖かった」と言っていました。まだ余震が続いているそうで、平穏な日常に戻るにはもう少し時間がかかりそうです。日本ではすでにいつもの恩返しとばかりに支援金の募集が始まっていますが、私も心ばかりの寄付をしようと思います。
3月に発行された「慶應法学」に「ストリーム配信におけるValue Gap問題に関する一考察」という論文を掲載しました。私の師匠の竹中俊子先生の退職記念号ということで、教え子の代表として執筆させていただきました。この論文ではレコード会社とアーティスト間のサブスク配信にかかる印税の配分が不公平すぎることを指摘しています。日本ではサブスク配信の印税をレコード会社99%:アーティスト1%で分けるケースが多々あります。一方、ヨーロッパでは均等に分けるべきだという意見が強く、ベルギーやスペインでは法律で50:50に分けるように規定されています。
なぜこのような不公平な契約がまかり通るのでしょうか。交渉力の違いや情報の非対称性等、さまざまな要因が考えられますが、最も大きな要因はレコード会社が自分の利益しか考えず、音楽業界の持続可能性をまったく考慮していないことです。サブスク配信が音楽ビジネスの主流になりつつある今、サブスク配信の印税を99:1で分けたら、アーティストや事務所が経済的に立ち行かなくなり、音楽業界のキーパーソンであり、主役であるアーティストの成り手が減少するのは目に見えています。このような不公平な契約を強要するレコード会社は一刻も早く消滅して欲しいと心から願います。
友人の編集者に勧められて安藤祐介『本のエンドロール』を拝読しました。印刷会社の仕事が詳細かつわかりやすく描かれていて、自分の本がどのように印刷されて、世に出ているのかがよくわかりました。3月25日に発刊した私の『エンターテインメント・ビジネス~業界構造と契約実務~』でも出版ビジネスという章で作家、出版社、取次会社、書店の仕事を詳細に解説していますが、印刷会社についてはあまり触れていませんでした。改訂版では印刷会社について詳しく解説して、出版ビジネスを支えている人々の仕事ぶりをわかりやすく紹介したいと思います。