今月のエッセイ(2023/4)
Author: セプティマ・レイ
4月です。日本では希望で胸を一杯にした新社会人や新入生が街にあふれていると思います。みなさんの新たな門出を台北から祝いたいと思います。さて、台湾生活も7か月が過ぎました。相変わらず、各地の大学から講演依頼が来ています。3月13日には嘉義にある国立中正大学で音楽ビジネスとアニメ・ビジネスをテーマにした講義を行いました。大学付近のホテルに一泊し、翌日は嘉義の名所を観光してきました。ここはパイナップル畑が有名で、広大な土地にパイナップルが一面に広がっています。帰りにパイナップルケーキを買いましたが、これまで食べたパイナップルケーキの中でもピカ一の絶品でした。
縁あって、台湾の法律雑誌「月旦律評」(元照出版公司)に論文を載せることになりました。最近、バリューギャップ問題の論文を書いていないので、EUのデジタル単一市場における著作権指令(DSM指令)の国内法制化の動きを紹介する論文「Legal Issue on Value Gap between Record Labels and Artists in Music Streaming Business」を寄稿しました。この法律雑誌は今月中に発行される予定です。英語で執筆して、知り合いの弁護士の先生に中国語に翻訳してもらっています。次の号にも執筆を依頼されているので、次回はピアノ教室最高裁判決について解説する予定です。 ヨーロッパではDSM指令を受けて、サブスク配信におけるレコード会社とアーティストの取分比率を50:50にするという動きが強まっています。歓迎すべき動きであり、ぜひヨーロッパ以外の国々でも広まって欲しいと思います。一方、日本の多くのレコード会社は、アーティストとの分配率を99:1(!)とする契約を押し付けています。このような著しく不利な条件をアーティストに押し付けて、レコード会社の人間は恥ずかしくないのでしょうか。こういうアーティストを軽視するレコード会社はすべて滅びて欲しいです。まあ、私が思わなくてもアーティストに見放されて、そのうち滅びるでしょうが・・・。
私の同級生は今年ほとんどが役職定年を迎えます。つまり、第一線から退く時期が来たということです。しかし、サポート役も大変重要な仕事です。これまでの知識や経験を後輩たちにわかりやすく伝えていかなければなりません。残念ながら音楽業界では、このような文化はありません。あくまでも自分が成功したいという気持ちが強すぎるのです。私が1995年に「よくわかる音楽著作権ビジネス」という本を出版した時、いちゃもんをつける業界人が少なくありませんでした。さすがにこういう人は少数派になりましたが、当時は少なからずショックを受けました。音楽業界も知識や経験を広くシェアするという文化を育てて欲しいと思う今日この頃です。