今月のエッセイ(2022/11)
Author: セプティマ・レイ
11月です。早いもので台湾生活も3か月目に入りました。残念ながら雙連駅の近くにある冰讃(ビンザン)が長いお休みに入ってしまいました。再び開店するのは来年の4月です。毎週食べていたマンゴーかき氷の代わりとして、今はまっているのは台湾パイナップルです。台湾パイナップルは甘くて安いうえに、芯まで食べられます。1房80元(日本円で350円くらい)なので、お買い得です。近所の果物屋さんで買うのですが、お店には猫が放し飼いされています。お店は路上に面していて、ドアも窓もないので、よく逃げないな~と感心してしまいます。毎回猫を見つけるたびに「にゃ~、にゃ~」と鳴いていたら、仲間だと認めてくれたようで、今では目を細めたり、ひっくり返ったりしてくれます。
ところで10月24日に音楽教室事件の最高裁判決が下されました。今回も共同通信から取材依頼を受けたので、判決前と判決当日の2回にわたってお話しました。最高裁は知財高裁の判決をひっくり返すと思っていたので、ちょっと拍子抜けしましたが、同時にほっとしました。全体的に知財高裁の判決を踏襲しているので、若干新味に欠けますが、演奏権の間接侵害における判断基準として、新たに「演奏の目的」を加えました。日本の間接侵害は適法利用を違法利用に転換することができるものなので、最高裁が「演奏の目的」を判断基準に加えたことは妥当だと思っています。今回の最高裁判決によって、悪評高きカラオケ法理は完全に葬り去られたでしょう(そう願っています)。
そもそもJASRACは音楽教室から著作権使用料を徴収するべきではありませんでした。音楽教室がこれまでどれだけ音楽教育に貢献してきたかを考えれば、音楽教室から使用料を徴収するという発想は生まれなかったはずです。権利は必ず行使しなければならないものではありません。権利を行使するかどうかは、権利者の自由なのです。権利を行使しない方が文化の発展に寄与することだってあるのです。JASRACにはこの発想が決定的に欠けています。今回の判決を受けて、音楽教室の使用料率(受講料収入の2.5%)は当然見直されることになりますが、生徒と先生の演奏時間の比率は9:1くらいでしょう。であれば、使用料は受講料収入の0.25%となります。JASRACは年間の使用料収入を最大10億円と見ていたようなので、この料率を適用すると1億円になってしまいます。JASRACの手数料率は25%なので、手数料収入は2,500万円となり、絶対に採算は取れないでしょう。つまり、音楽教室からの徴収をやめるべきなのです。
ところで10月11日に台北の国立政治大学で3時間(!)の授業をしてきました。私の知人が政治大学の教員なので、彼からの依頼を受けて日本のエンタメビジネスについてお話ししました。学生は留学生が多く、さすが名門大学と思いましたが、中に日本人の留学生が一人いました。彼女に聞くと、9月に入学したばかりで、慣れない生活や授業に苦労しているようでした。しかし、異国の地で一人頑張っている日本人を見ると、心から応援したくなります。私も17年前にアメリカのロースクールに行って、3年間留学しましたが、最初の半年は苦労の連続でした。でも、その経験があるからこそ、台湾大学や政治大学で授業ができるわけです。苦労は絶対に報われます。私も台湾での1年間を実り多きものにするように、努力を重ねたいと思う今日この頃です。