今月のエッセイ(2022/6)
Author: セプティマ・レイ
6月です。5月21日(土)は著作権法学会の研究大会でした。今年のシンポジウムのテーマは「著作権法における契約法」でした。私は「米国における終了権制度」について30分ばかりお話し、その後の議論にパネリストとして参加しました。4人のパネリストと1年弱もの長期間にわたって、入念に準備しました。当日はその成果が存分に出せたと思います。私はこれが最後の登壇だと思って、悔いのないように言いたいことを言ってきました。オンラインでの開催だったために、聴衆の反応がわからなかったので、一抹の不安がありましたが、アンケート結果や参加者の感想を聞くと、概ね好評だったようで安心しています。
実は、私はシンポジウムで発表した終了権制度を研究するために、アメリカに3年間留学しました。その成果を「アメリカ著作権法における終了権制度の一考察-著作者に契約のチャンスは2度必要か-」という論文にして、2008年2月に早稲田大学法学会誌という紀要に発表しました。それから実に14年の月日が経ちました。今回、自分の長年にわたる研究成果を学会で発表できて、本当に感無量でした。研究を始めた頃は、日本には著作権契約法の導入に賛成する学者はほんとに少なく、超少数派でした。しかし、外国では著作権契約法を導入する国がかなり増えていて、今では日本は特異な国となり、世界から孤立しつつあります。
私は幼少の頃から母親に「おかしいことはおかしいと言いなさい」と教わってきました。人間関係を悪化させたくないので、なかなか思ったことを言い出せない人が多いと思います。私は人間関係よりも言いたいことを優先させるので、人間関係が悪化することが少なくありませんが、母親の教えが身に染みているので、あまり気になりません。著作権法学会のシンポジウムでも著作権契約法がないのはおかしいと思ったことを主張してきました。唯一後悔しているのは「金を出したやつがそんなに偉いのか」と言い忘れたことです。実務家はすぐに「金を出した者=偉い」という方程式で発言しますが、私から言わせると、優れた作品やパフォーマンスを提供したアーティストの方がよっぽど偉いのです。
さて、最後に公開講座のお知らせです。先月のエッセイでもお伝えしましたが、今年も東洋大学で恒例の公開講座を開催します。今回のテーマは「アニメビジネスの過去・現在・未来」です。日時は7月9日(土)13時から18時まで、会場は東洋大学白山キャンパス(今回は対面のみです)、講師は登壇順に高見洋平さん(講談社ライツ・メディアビジネス局アニメ・ゲーム事業部長)、松下洋子さん(アニメ企画制作プロデューサー)、西村純二さん(演出家、アニメ監督、脚本家)です。東洋大学のウェブサイトで6月29日(水)まで申込を受け付けておりますので、興味のある方はぜひご参加いただければ幸いです。
https://www.toyo.ac.jp/social-partnership/csc/koza/koza/2019list/2022haru-itiran/2022haru-a13/