今月のエッセイ(2020/09)
Author: セプティマ・レイ
9月です。猛暑がやっと過ぎ去ったようで、ようやくクーラーから解放された日が続いています。ところでアメリカでは大統領選挙運動の真っ只中です。毎日、アメリカのニュースを見たり、聞いたりしていますが、トランプ大統領は再選のためなら手段を選ばないという姿勢で、相変わらず国民の分断や対立を煽っています。しかし、11月の大統領選ではトランプ大統領は100%再選されないでしょう。経済政策は一定の成功をもたらしましたが、やはり政治家の経験がないためでしょうか。ほかの分野では目立った功績を残すことができませんでした。コロナ対策も大失敗に終わっています。そこが政治の素人の限界なのかも知れません。
日本でも安倍首相が体調を理由に、総理大臣を辞任する意向を発表しました。私も記者会見を見ましたが、かなりの難病であることが話しぶりからわかりました。ユーミンがラジオで「テレビでちょうど見ていて泣いちゃった。せつなくて。」と言ったそうですが、気持ちはわかります。しかし、これに対して、ある大学の講師が「醜態をさらすより、早く死んだ方がいいと思いますよ」とFacebookに投稿しました。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いということなのでしょう。しかし、この心ない投稿に対しては、多くの人々から批判が殺到しているようです。私も「このコメントはひどすぎる」と強い憤りを感じました。
私は小学校4年生の時にユーミンを初めて聴いてから「会ったら死ぬかも」と思うくらいのファンです。このことは、朝日新聞の「be」のフロントランナーの記事にも載っています。ユーミンの歌にどれだけ多くの人が救われてきたことか。私が10年前に山本潤子さんのコンサートに行った時、「卒業写真」のイントロが流れただけで、会場中にすすり泣きが聞こえました。私も演奏中、号泣していました。イントロを聴いた瞬間に、40年前にタイムスリップしてしまうのです。ユーミンはたまたま安倍首相の会見に対するコメントをしたばかりに、変な騒動に巻き込まれてしまいましたが、これからもユーミンらしく自由な発言を続けてもらいたいと思います。
ユーミンの音楽のように、音楽は人々の生活にとってきわめて重要な存在です。コロナのせいでライブやコンサートができないため、アーティストは困窮を極めていますが、何とかライブ配信で糊口をしのごうとしています。しかしながら、先月のエッセイで書いた通り、一部のレコード会社がライブ配信は専属契約の対象だと主張して、プロダクションや配信事業者から専属解放料を要求しています。このせいで、現場では揉めに揉めています。レコード会社がこのような理不尽な要求をすれば、アーティストはほかのレコード会社に移籍するでしょう。あるいは専属契約からワンショット契約に切り替えるでしょう。目先の利益だけに目がくらんだやり方がうまくいかないのは火を見るよりも明らかです。こんなことにも気が付かないレコード会社の法務は、本当に情けない限りです。