今月のエッセイ(2018/12)
Author: セプティマ・レイ
12月1日の朝、長年飼っていた猫が永眠しました。名前はにこ(通称はにっちゃん)、歳はおそらく20歳くらいです。おそらくというのは、うちが飼い始めた時、すでに7歳くらいだったと思われるからです。今日は今は亡き、愛すべきにっちゃんを偲んで、うちの猫の話をしたいと思います。
私が猫の鳴き声をすると、どんな猫でも寄ってくる話を以前しましたが、そんな私でも苦手な猫がいました。それは私がアメリカに留学していた時に住んでいたアパートの隣の部屋の猫です。彼女は雉猫(きじねこ)で名前をベティといいました。隣に住んでいるアパートの管理人が飼っている猫でした。管理人が仕事で1階のオフィスにいるときは、5階の廊下に角隅にずっと座っていました。猫好きの私が何度、猫の鳴き声をしても、見向きもしません。完全無視です。猫使いとしては、かなりショックです。正直、凹みました。他の住人に対しても挑戦的で、決してなついたりしません。
ある日、ベティの飼い主である管理人が急にクビになってしまい、ベティは同じ階の住人に引き取られました。代々、そのようにして、アパートで飼われていたようです。しかし、引き取られたその日から、なぜか新しい飼い主ではなく、私の部屋で過ごすようになりました。飼い主の部屋に戻るのは、食事とトイレの時だけです。数か月後、その飼い主も引っ越すことになり、結局、私たち夫婦が引き取ることになりました。シアトルで2年近く一緒に暮らした後、日本に連れてきました。
ベティはアパートの管理人が代々飼っていたので、年齢不詳です。病院のお医者さんはおそらく7歳くらいだろうと言っていました。名前もベティからニコになりました。最もなつかなかった猫が、こんな甘えん坊の猫は見たことがないというくらい甘えてきました。特に私のお腹の上がお気に入りで、すぐに乗っかってきました。冬は私が椅子の上であぐらをかいて、その上で寝るようになりました。夜は私の布団に来て一緒に寝ます。私がパソコンをやっている時は、隣の椅子で寝ています。つまり、24時間、私と一緒にいました。
そんなニコも最近はすっかり弱くなっていました。特に後ろ足が生来弱いため、高いところに上れなくなりました。猫の習性からすると、これはつらいことです。うちもニコのためにバリアフリーにしました。お気に入りのテーブルの高さを下げたり、絨毯を敷いたりして、対処しました。それでも寄る年波には勝てません。1日の朝、急に具体が悪くなり、息を引き取りました。私の頭は真っ白になり、何も考えられなくなりました。
実は私は異常な動物好きで、こうなることは過去の経験から分かっていました。なので、ニコを飼う時はかなり躊躇しました。しかし、シアトルのアパートのわれわれの前の飼い主が引っ越す時に「誰か貰い手がいない場合、保健所に連れて行って処分してもらう」という張り紙をエレベーターに張ったのです。このとき、私とかみさんはニコを一生面倒を見ようと決心しました。そして、最大限の愛情を注ぐと決めたのです。おかげでニコは天寿を全うしたと思いますが、それでも突然の別れを受け入れることはできません。来年は喪に服す一年になりそうです。