今月のエッセイ(2015/11)
Author: セプティマ・レイ
しばらく大学の話が続きましたので、今月は久しぶりにコンサルタントの話をしたいと思います。先日、うちのクライアントに同席して、某レコード会社の方々(4名)と契約交渉をしました。サブスクリプション・サービスの開始にあたって、アーティスト印税をどうしましょうかという内容だったのですが、先方の法務スタッフの態度はひどいものでした。そもそも交渉相手の話を誠実に聞いて、落としどころを探すという気持ちが毛頭ない。だれが聞いても不合理な解釈を正当なものとして強弁するという、本当にひどい交渉態度でした。この打ち合わせは、先方の法務部が11年前に作成したいい加減な合意書が原因で行われたものです。それにもかかわらず、謝罪や反省の言葉は一切ありませんでした。
これには私のクライアントも心底呆れていました。この方は入社以来、法務・経理畑でしか働いていないため、現場に出たことがない。アーティストやプロダクションの苦労をまったく知らないのです。私は常々思いますが、レコード会社はスタッフを法務部に配属する前に必ず営業や宣伝、制作を経験させるべきです。さらにいうと、マネージメント・セクションがあるなら、そこでマネージャーの経験を積ませるべきです。そうすれば、血の通った交渉ができるはずだし、レコード会社にとってもビジネスがスムーズに進めることができます。
この時の交渉もそうでしたが、レコード会社のスタッフは法務部に気を遣い過ぎです。「難しい法律の話は分からない」という態度があからさまです。また、法務部のスタッフはそれに乗じて、自分の存在感をアピールする傾向にあると思います。彼らは会社のビジネスを妨害するのが仕事ではなく、ビジネスを進めるための法的なサポートをするのが仕事なはずです。なのに、交渉相手に理不尽な主張をして、大切なビジネスの芽を摘んでいるケースが少なくありません。レコード会社は法務部のあり方を一から見直すべきです。
ここでは交渉の内容を詳しく書くことができないのですが、この法務担当者の不誠実な態度には本当に腹が立ちました。交渉で「あなたは不誠実だ」と10回くらい言ったような気がします。不誠実な人とは仕事しないというのが私のポリシーですので、クライアントには「あの人は不誠実なので、ダメです」とはっきり言いました。不誠実な人と仕事をしてもろくなことがありません。こんな誰でも分かることが分からないなんて、社会人として失格です。
子供の頃、大人から「自分が悪いんだから素直に謝りなさい」とよく言われましたが、最近は大人の方こそきちんと謝らないと思います。下手な言い訳をするよりも素直に謝った方が絶対に交渉は前に進みます。こんなことが分からない法務スタッフは対外的な交渉が不要な部署に異動させるべきです。もちろん、自分もこのようなスタッフにならないように、「他人の話に素直に耳を傾けて、真摯に対応すること」を肝に銘じようと思います。