今月のエッセイ(2014/11)
Author: セプティマ・レイ
東洋大学では知的財産法の授業の他に、法学入門という科目を担当しています。これは白山キャンパスの法学部以外の学生を対象に、法学について分かりやすく教えるというものです。法学入門は、通年の授業ではなく、春学期2単位、秋学期2単位の選択科目なのですが、履修者が300人を超えるため、大教室での講義になっています。
今年の春学期は、「法学とは」に始まって、憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法を駆け足で教えました。ほとんどの学生が法律の初学者にもかかわらず、熱心に受講してくれました。また、中間試験と期末試験は持込不可で難易度もかなり高いものでしたが、びっくりするほど成績が良く、とても感心しました。
今年の秋学期は、前半に著作権法、商標法、不正競争防止法、特許法を教えました。後半では労働法、個人情報保護法、下請法、消費者保護法を教える予定です。知的財産法は私の専門なので、まあいいとして、後半に労働法、個人情報保護法、下請法、消費者保護法を教えるには理由があります。というのは、これらは学生が社会生活を送る上でかなり重要な法律だからです。
実は私が高校教師をしていた27年前、政治・経済の授業で労働法を教えていました。三六協定や割増賃金なんかの話をすると、高校生は「へぇー、そうなってるんだ」と興味津々でした。学校に内緒でバイトをやっている生徒も多く、話にリアリティーがあったからでしょう。それに給料や休日、残業手当等の話は、就職に際して最も気になる事柄でしょう。この時ばかりは普段やる気ゼロの生徒が目を輝かせていたのを思い出します。
学生を無防備なまま社会に送り出すことは、大学としてはできるだけ避けなければなりません。学生に自分の身を守る最低限の知識を身に付けさせる義務が大学にはあると思います。資本主義社会は弱肉強食の世界です。残念ながら正義が必ずしも勝つとは限らない社会なのです。自分の数多の職場体験を語りつつ、学生には社会で強者に搾取されないように、生き抜く知恵を身に付けてもらいたいと思っています。