今月のエッセイ(2014/03)
Author: セプティマ・レイ
ソチ・オリンピックが終了しました。ジャンプの葛西選手やフィギュアの浅田選手、スノーボードの平野選手・平岡選手の活躍に大いに感動しましたが、手に汗握って、テレビ画面を見つめたのは日本カーリングチームの活躍でした。これまであまり興味がなかったのですが、カーママたちの戦いとあって、初めて試合を真剣に見ました。解説者の敦賀さんの説明が素晴らしく、ルールはすぐに理解できました。また、氷上のチェスと言われるだけあって、想像以上に頭を使う競技であることが分かりました。このようにカーリングはあまりに奥が深く、これまでの浅学を恥じてしまいました。
日本チームは世界ランキング9位と出場チームの中では下位に属していたのですが、本番では実力を発揮して見事5位に入賞しました。特に今まで一度も勝てなかった中国を相手に、互角以上の戦いをして、会心の勝利を収めました。この試合を見て、「ひょっとしたらベスト4に進むかも」と思った日本人は私だけではなかったはずです。残念ながら強豪スウェーデンに敗れて、決勝トーナメントに進めませんでしたが、大健闘だったと思います。
オリンピックは4年に一度だけ開催されるため、選手のプレッシャーは他の国際大会よりも格段に高まります。本番で失敗したら、次は4年後になるわけです。また、次回のオリンピックで選考される保証はどこにもありません。浅田選手がショート・プログラムで実力を発揮できなかったのも、どこかで「ここで失敗したら・・・」という思いが頭をよぎったのかもしれません。4年間必死で積み上げた努力が一瞬にして崩れ去る恐怖といったらないでしょう。心ない言葉を投げた元首相がいますが、想像力があまりに貧弱です。
オリンピックで毎回話題になるのが、審査系スポーツの判定の公平性です。フリーのキム・ヨナ選手のパフォーマンスの方がロシアのソトニコア選手よりも低く採点されたことで、審判員が強く批判されています。私もソトニコアの点はホームということでいくらか加算されているような気がします。ただ、それよりもおかしいと思ったのは、女子モーグルの上村愛子選手とハナ・カーニー選手の採点です。多くの人が上村選手の方が素晴らしい滑りをしたと思ったのはないでしょうか。
採点基準の変更が大きく影響しているという解説がありましたが、ノーミスの滑りをした上村選手ではなく、明らかなミスをしたカーニー選手にメダルをあげるような競技は、あまりに理不尽で興味を失います。抗議をしなかった上村選手の崇高な態度に救われましたが、この競技には興味がなくなりました。同じような思いをしている人も少なくないと思います。審査系スポーツの生命線は、審査基準の透明性・明確性・妥当性です。見ていて勝者が分からないような競技は人気が出るわけがありません。その意味ではモーグル競技の審査基準は失格と言わざるを得ません。審査系スポーツの興味を高めるためにも、関係者は今回の批判の声に対して、真摯に耳を傾けるべきだと思います。