今月のエッセイ(2013/10)
Author: セプティマ・レイ
大好評を博した人気ドラマの「あまちゃん」と「半沢直樹」がついに終わってしまいました。テレビはあまり見ない方なのですが、この2つの番組は毎回欠かさずに見ていました。そこここで「昨日のあまちゃんさ~」とか「先週の半沢は面白かったな~」などという会話が聞こえてきました。ドラマを見た感想を興奮気味に話す人々を見るにつけ、久々にドラマが社会現象を起こしたな~と実感しています。
ご存じのとおり、「あまちゃん」は1980年代のアイドル・ブームを知っている世代にはたまらない内容になっています。そもそもキョンキョンと薬師丸ひろ子が共演しているということだけで必見ものです。ドラマの中で、往年のアイドルである松田聖子や田原俊彦はもちろんのこと、吉川晃司やひかる一平、太川陽介たちの懐かしいレコード(もちろんLP)が出てくると、「あ~、それ、持ってた~」という往年のファンの声が茶の間から聞こえてきそうです。
もちろん、「あまちゃん」は若い世代の人たちにも大いに楽しめる内容になっています。能年玲奈や橋本愛、有村架純といったアイドル並みの美少女がたくさん出てきますし、福士蒼汰といったイケメン俳優も登場します。老若男女を問わず、幅広い視聴者に支持されたからこそ、20%を超える高い視聴率を獲得できたのでしょう。
幅広い視聴者に支持される番組ゆえに、歳を離れた人たちの間でも話題に上ることになります。先日、某大学の講師室で作業していると、学者4人がテーブルで「あまちゃん」談義をしていました。一人だけ若い学者(30代前半)が混じっていたようで、ほかの学者から「え~、キョンキョンがアイドルの時を知らないの~」「薬師丸ひろ子が歌番組に出てたの、知らないんだ。若いね~」などと言われていました。
私は横で聞いていて、少々うんざりした気持ちになりました。というのも、「○○○を知らないんだ~、若いね~」というセリフは、「私はあなたより長く生きているんだよ。つまり、あなたよりも人生経験があって、物事をよく知っているんだ」と言っているように聞こえるからです。昔からこのような上から目線の言い方に違和感を覚えていて、どうしても「だから何なの」と思ってしまうのです。
相手が知らないことを指摘するよりも、その頃の様子や状況を分かりやすく説明してあげる方がよっぽど親切で健全でしょう。1980年代のキョンキョンや薬師丸ひろ子がアイドルや超人気女優として、どんなに活躍していたかを詳しく説明してあげれば、会話はさらに盛り上がります。そして、そのような情報は、宮藤官九郎がドラマにこっそり潜ませている小ネタの解読にもつながるでしょう。
このように、自分が相手より年上であることを自慢するより、共通の話題ができたことを喜んで、自分の知っている情報を共有した方が何倍も楽しいと思います。それこそ異文化コミュニケーションならぬ異世代コミュニケーションです。普段はなかなか会話が成り立たない者同士でも、「あまちゃん」を通して、話が盛り上がる。そのおかげで職場や家庭内でさらに良好な人間関係が構築できるかもしれません。それこそがクドカンが番組を通じて達成しようとした目的の一つなのかもしれませんね。