今月のエッセイ(2013/08)
Author: セプティマ・レイ
TBSで日曜午後9時から放映されているドラマ「半沢直樹」の視聴率が22%を超えたそうです。このドラマは本当に出色の出来で、久々に「ドラマのTBS」という言葉を思い出しました。煮え湯を飲まされ続けた主人公が、最後の10分間で無理難題を押し付けたり、自分を陥れようとする上司に対して、啖呵を切って「倍返し」をします。私はわざわざビデオを撮って、このシーンを繰り返して見るくらいのファンです。まさに胸がすくとはこのことです。
この番組は現役のバンカーだけでなく、日頃、主人公と同じように上司や同僚に理不尽なことを押し付けられている全国の会社員が「そうそう、その通り」と画面を食い入るように見ているのでしょう。私も彼らの例に漏れず、出向先の会社の上司から辞めるように追い込まれたことがあります。その理由がなんと自分の元同僚(その時は別の会社に勤めていた)を自分の会社に戻して、私のポジションを与えたかったという、くだらないものでした。
そのやり方も汚いもので、私に直接伝えず、海外にいる私の仕事上の上司(外国人)に私の辞職を伝えるというものでした。いきなり彼から電話がかかってきて「Ando, are you leaving the company?」と訊いてきたのです。これには私も二の句が継げませんでした。さすがに腹に据えかねた私はその上司に「納得できる理由を聞かせてください」と詰め寄りました。結局、彼は違約金を払うことを承知し、すべてを人事部長に任せて、まんまと自分の友人を会社に迎え入れました。
自分に落ち度がある場合は「仕方ない。私が悪かったんだから」と諦めもつきます。しかし、この例のように自分に非がない場合は納得がいきません。当然、忘れることができない苦い思い出となります。ちょうどその上司は当時50歳くらい。今の私くらいです。私が彼の立場でも絶対あのようなことはしません。きっと本人はすっかり忘れている出来事でしょう。やった方は忘れても、やられた方は忘れないものです。
「半沢直樹」を見て「あれっ、俺っていじめている役の方かも」と思う視聴者もいるでしょう。いや、ぜひ気がついて欲しいのです。少なくとも自分の失敗を部下に押し付けたり、虫の居所が悪いだけで部下を怒鳴りつけているような上司には、この番組を見て「俺も反省しなくちゃな~」と思って欲しいと思います。だって、「倍返し」のない会社は部下だけでなく、上司にとっても過ごしやすいでしょうからね。