今月のエッセイ(2013/05)
Author: セプティマ・レイ
4月上旬にアメリカ東部にウェブキャスティングの調査のために出張しました。ワシントンDC、ニューヨーク、ボストンの3都市を1週間で周るという強行スケジュールでしたが、インタビューや面談はとてもうまくいきました。ボストンではバークリー音楽院で著作権法の授業も行いました。さすが、アメリカの大学です。講義の途中でも学生から矢継ぎ早に質問が押し寄せてきます。20分の予定が1時間近く講義することになりました。
すべての行程が終了し、4月10日の早朝5時にホテルを出発して、ボストン空港に到着しました。チェックインして搭乗を待っていると、何やら怪しげなアナウンスが流れてきました。目的地であるシカゴの天候が悪化しているために、遅延を余儀なくされているという内容でした。同行者と「ちょっとまずいね~」とため息をつきました。というのも、シカゴでの乗換時間は2時間もなかったからです。
結局、予定の時間から3時間近く遅れて、飛行機は離陸しました。これでは乗継便に間に合いません。案の定、シカゴに到着すると、われわれが乗るはずの成田行きのUA便は離陸した後でした。とりあえず、航空会社のスタッフに善後策を教えてもらおうとサービス・カウンターに行くと長蛇の列です。それもそのはず、われわれのような乗客が数えきれないほどいるのですから。
それでも選択の余地はないと待っていると、UAのスタッフが近づいてきたので、話しかけると「目的地はどこですか」と訊くので「日本です」と答えました。すると13時発のUA便があるので、搭乗ゲートまで行った方がいいというアドバイス。実は搭乗ゲートまで行ったのですが、長蛇の列だったので、こちらに並び直したのです。そう説明すると、「この列に並んでも何時間かかるかわからないわよ。私だったら搭乗ゲートに行って直接交渉するけど・・・」という説得力のある言葉が返ってきました。「わかりました。ありがとう」と言い残し、われわれは搭乗ゲートに向かって走り出しました。
搭乗ゲートに着くと乗客を乗せた後のようで、カウンターには誰もいません。すぐに交渉開始です。事情を説明したところ、気難しい顔をした中年の男性スタッフが「サービス・カウンターに行ってチケットを交換しないと乗れません」という冷たく言い放ちます。それでも「明日までに日本に帰る必要があるんです。この便に乗れませんか」と粘っていると、隣にいた日本人の女性スタッフが無言でキーボードを叩き始めました。そして「パスポートを見せてください」と言うじゃありませんか。パスポートを見せると、すんなり搭乗券を発行してくれました。もちろん、私の同行者の分もです。
この便を逃すと翌日まで成田行きの便はなかったので、危うくシカゴで一泊するところでした。クレーマーにはなりたくないですが、今回はそれほどの無理を言ったわけではありません。さらに機内は比較的空いていましたので、他のお客さんに迷惑をかけたわけでもありません。とっさに機転を利かせてくれた女性スタッフに大変感謝しています。やはりサービス業は柔軟な対応が必要だな~と思いながら、帰国の途に就いたのでした。