セプティマ・レイ(SEPTIMA LEY)

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今月のエッセイ(2013/04)

Author: セプティマ・レイ

 今月のエッセイを始めてからちょうど1年が経ちました。言いっ放し、書きっぱなしの無責任なエッセイですが、今後ともどうぞよろしくお願いします。さて、このサイトでは契約書のフォーマットが自由にダウンロードできるようになっていますが、1周年を記念して、新たに3種類の契約書フォーマットを追加しました。読者からの要望が高かった①専属マネージメント契約、②原盤使用許諾契約(携帯電話向け音楽配信)、③秘密保持契約です。

 幸いにも私が作成した契約書フォーマットは好評のようで、音楽業界で徐々に広まっているようです。メジャーのレコード会社が用意する契約書は、アンフェアで不合理な条項が多く、決してお勧めできません。かといって、契約書を一から作成するのも時間と労力が必要です。そのような事情がその背景にはあるのでしょう。もっともっと広まって、いつか音楽業界のスタンダードになってくれればいいなと思います。

 私が音楽業界に入ったのが1989年5月ですから、24年にわたって契約書を作成し続けていることになります。その間、アメリカのロースクールで3年間留学し、さらに法学の博士号を取得しました。実務と理論を学習する中で、自分なりに契約書の美学のようなものが次第に構築されていきました。たとえば、①ですます調で作成する、②フォントはMSP明朝を使う、③なるべく別紙を使わない(使ったとしても短く)、といったことです。

 特にですます調にはこだわっています。ただでさえ契約書の文言は分かりにくく、エラそうな表現が多いので、である調の契約書を読むだけでムッとします。一方、ですます調だと表現が柔らかくなるので、少々強引な条項でも「まあ、いいか」なんて思わせる効果があります。

 別紙でぐだぐだ規定する契約書がありますが、これはよくありません。大事なことは本文で書けよと言いたくなります。脚注がやたらと長い論文のようなものです。レコード会社は印税計算の規定を別紙で記載する傾向がありますが、アーティストや事務所に不利な条項ばかり書いてあるので、最後に持ってきているのでしょう。通常はそこまで読み進める前に集中力が途切れますから。

 契約書の作成には法律理論と実務の知識が必要です。ただ、それだけでは十分ではありません。実は実務経験がとても重要なのです。レコード会社の法務部には、制作やマネージメント、宣伝等の現場経験のない人が大多数を占めています。新卒で法務部所属という人が圧倒的多数です。それでは契約当事者の意向が十分に反映された契約書を作成するのは不可能です。1年でも現場で修業を積んだらかなり契約交渉業務がスムーズになると思うのは私だけでしょうか。

This entry was posted on 月曜日, 4月 1st, 2013

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