今月のエッセイ(2013/02)
Author: セプティマ・レイ
体罰に関するニュースがさかんに報道されていますが、「何をいまさら」と感じている人は少なくないでしょう。教師が教え子に手を挙げることは昔から当たり前のように行われていましたし、教え子が泣き寝入りしてきたことは周知の事実だったからです。私も小学生の時に頭を叩かれたことがありますし、両親に言っても「おまえが悪い」でおしまいでした。そんな時代が今回の事件を契機にようやく終わりを告げるかもしれません。
ほとんどの教師は大学を卒業して、すぐに教職に就きます。つまり、実社会の経験なく、いきなり一国一城の主になるわけです。23歳の若造が「○○先生」と同僚や教頭、校長に呼ばれるのです。「おれって偉いんだな」と勘違いする教師がいても不思議ではありません。私も大学卒業後すぐに高校教師になりましたが、音楽業界に入って、初めて自分の大いなる勘違いに気が付きました。今では転職してよかったと思っています。
終身雇用の時代はとうに終わりを告げましたが、これはいい点もあります。転職すると、自分がいた職場を客観的に見ることができます。そうすることで、よりいい職場にしようというモチベーションが高まるわけです。私はこれまで自分の会社を含めて5つの職場を経験しました。二度と戻りたくない職場が1つだけありますが、ほかは尊敬できる上司や仲間がいて、いい思い出です。
ところで小学生の時に通っていた四谷大塚進学教室で「あなたの将来像」というテーマで作文を書くように言われました。私は1年に1つの仕事をして、40回転職をし、さまざまな技術や知識を身に付けたいと書きました。採点結果は30点くらいだったと記憶しています。しかし、今考えてもかなり斬新な発想だったと自画自賛しています。1年に1回は早すぎるにしても、10年に1回くらいのペースの転職であれば、かなりユニークで充実した人生を送れるのではないでしょうか。
一方、桜宮高校の体罰教師のように一か所に長年にわたって権威として居続ければ、彼を頂点にヒエラルキーが形成され、腐った環境が生み出されます。これは学校に限らず、社会全般に言えることです。会社内の人事異動もこのような愚かな権威を生み出さないための予防策として重要な意味を持っています。その意味では、このような環境を作り出した大阪市教育委員会の責任は大きいと言わざるを得ないですし、われわれは同じ轍を踏まないように心掛けなければならないと思います。