今月のエッセイ(2012/05)
Author: セプティマ・レイ
仕事柄、知的財産法関係のセミナーやシンポジウム、研究会に出席することがあります。中にはどうしようもなくひどい発表や報告もありますが、多くは勉強になるものであり、なるべく出席するようにしています。
大きなシンポジウムやセミナーでは、たいてい報告の後に質疑応答の時間が設けられています。事前に質問票を渡して、講演者が回答していくという方法も最近多いのですが、やはり主流はその場で質問者が挙手して、講演者に質問するというやり方です。
その場合、司会者が質問者を指名するのですが、必ず「所属とお名前をお願いします」と言います。私はそのたびに「はっ?なんで所属が必要なの?」と思います。私の知る限り、外国ではこのような習慣はありません。所属先がどこかはその人を判断する重要な目安という日本人の感覚と、あくまでも人の判断は所属先ではなく、その人自身であるという外国の違いなのでしょう。
音楽業界でもたまに自分の勤め先が大企業であるため、やたら威張り散らす人がいます。そういう人に限って、自分の実力を過信し、独立して個人会社を設立しがちです。「会社の力=個人の実力
と誤解するんですね。しかし、社会はそんなに甘くはありません。たいていは仕事がなくてすぐに店じまいとなるようです。
名刺を渡さず、会社名も明かさないで、人はどのくらい強固で信頼ある人間関係が築くことができるのでしょうか。あるいはどれだけ人を惹き付けることができるでしょうか。昔、自分の肩書を偽って交際相手を探すという設定の「君が嘘をついた」というドラマがありましたが、まさに肩書に振り回される滑稽さを描いた秀作でした。大企業に勤める勘違いくんやシンポジウムの司会者たちにぜひ見てもらいたいものです。